プロジェクト

小豆島スローフード篇

写真館ギャラリー3本目のタイトル、スローフード篇がアップになった。
今回の撮影は間をあけて2日間。
素麺と佃煮と醤油という島の三大スローフードがテーマだ。
ただ 作業工程を撮ったのではありきたりになってしまう。
私なりのどんな切り口が見つかるかと、最初は正直いって不安もあった。
そのうえ 撮らせていただくみなさんは撮影のタイミングやらを計りながら仕込みをしなくてはならないし、そのための時間も空けなくてはならない。
テーマを明確にしたうえで、効率よく撮らなければならない。

とにかく、この写真館を任せていただいてから、まず島の皆さんに喜んでもらえなければ意味がない、とそこだけは十分に気をつけたかった。
そして、スローフードというからには、島時間の流れとそれら食べ物を育てる人の温度が肌で感じられるようなカットを撮りたかった。
でも時間と温度は目には見えず、映像ではなく、シャシンという切り取られた時間の中にそれをどう視覚化したらいいかが最大のテーマだった。
でも面白いのは、いざジブンの目がファインダーとしてセットされると、いつもとは全く違う景色が見えてくること。
今回も朝からカットを重ねてゆくうちに、瀬戸内海に浮かぶこの島独特の陰影、光と陰が存在することが見えてきた。
とくにそれぞれお邪魔させていただいた工房に、それぞれの時間の流れ方とその食べ物を育んでいる光と陰の絶妙なバランスがあることに気がついた。
濃くも薄くもなく、なんともいえない、カラダにやんわりと浸透してくるような空気感と、あたかも意思をもっているかのような時間の流れ。
湿度と温度と光と陰、そこは人の手と大自然の暗黙の協力のなかで管理されてゆく。
そこで明らかに耳には聞こえない、それら食べ物たちのおしゃべりと歌が聴こえてくるような気がした。
それがまた人の手の温度とぬくもりに見守られながら、営々と受け継がれている。

また、今回はあえて外の景色は時間が止まったような少しレトロな感じを出したかった。
というのも、 私たちが生まれる前からそこにある空気感というのか、代々祖先の皆様方が、食べ物を糧と日々創りだすのに、苦労と工夫を重ね受け継ぎ伝えてきた無言のメッセージを時間軸の中に、ストップモーションのように、どういうかたちでか浮かび上がらせたかったからだ。

材料だけが食べ物の素材ではなく、そこにある坂道、塀、屋根、山や丘、海、それらのひとつひとつが醸し出す「環境」は人の手によるものと、人の手が届かない自然のありようの、まさにコラボレーション。
地球上の、たったここにしかない、小豆島という台所でつくられた、かけがえのない食べ物たちは、そのまま日本人が古代より慣れ親しんできた料理のもっともエッセンス、土台となる食べ物のありかたそのものだと思う。

なんだかずいぶん演説ぶってしまいました。
そんな想いで撮り仕上げた今回のロールですが、いままでの夏篇秋篇とは、ひと味違うつくりになっています。
ひととき楽しんでいただけたら存外の幸せです。
また、今回の撮影にあたり、ご協力いただきました関係者の皆様にこの場を借りて厚くお礼申し上げます。  
ありがとうございました。

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