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しまやど奮闘日記


ひときわ

2006年09月30日

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たいていお昼からの出勤なので、午前中に高松に行くことがある。
帰りの船に、大きい荷物の、おしゃれさんが乗っていたら、それは
今日のお客さんかもしれない。

昨日船の中で見た二人、予想どおり観光後にチェックインしてきた。
毎日、沢山の人を見ているせいか、雰囲気で島人かそうでないかが
ちょっと分かるようになってきたみたい。
同じ船に乗っていたことを告げると、「そういえば…!」とお客さん。
……どうやらニセ島人の私も浮いていたようです。
高速艇のゆれにも動じず、桟橋を颯爽と歩いているつもりだけれど、
まだまだだな。

何度かメールも交わしていた方だったので、ご夕食も担当させてもらう。
今日の日にどれほどの期待をもっていらしたかは、お話するとわかる。
「念願の」という言葉を、お客さんたちはよく使ってくださるけれど、
今思えば、船の中で際立って見えたものは、「念」なのかもしれない。
つよい想いが何かを放ち、感受しあうのだとしたら、なんて素敵な出会いだろう。
そういうことなら楽しむということにおいて、お客さんに負けてはいられない。
いつも浮き浮きと際立っていたい。

竹取のあるじ

2006年09月29日

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出勤すると、裏であるじが竹を切っていた。
お刺身をのせたり、お酒を入れたりする器にするのだけれど、
竹はすぐに色がとぶから、定期的に換えないといけない。
竹をとってきて、切り出して加工するのは見てるだけでも大変な重労働。
ちょっと怖がりのあるじ自ら、うっそうとした竹やぶに分け入って取ってきた竹。
この竹を器にして、美味しくないわけがないよ。
取りたてはとてもいい香りがするから、明日のお客さんはラッキーだな。

でも、あるじが取ってくる竹は、いつもちょっと足りない。
お猪口だけ新しくなって、竹筒は古いの。
色違いになっちゃうので、また取ってきて下さいねぇ…なんて簡単に言う私。

だけど、あるじの秘かな奮闘、しっかり伝えてますからね。
畑の様子や、おばあちゃんの奮闘、板さんの奮闘、私の奮闘。
それを知ったお客さんは、もっと嬉しそう、もっと美味しそう。
サービスにとって、美味しいエピソードをたくさん持ってることは強み。
持ってるだけではなくて、どれだけ自分が本当に美味しそうと思うか。
どれだけドキドキできるか、どれだけお客さんになれるか。
たくさんの想いがこもった力作を、毎日プレゼンテーション。

おじゃま虫

2006年09月27日

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島に来て、虫があんまりこわくなくなった。
私もよそ者だし、ただ此処を気に入って、棲みついているだけ。

でも、宿に出てきて困る虫はたくさんいる。
ムカデ、ヤスデ、ゴキブリ、クモ、アブ、ハエ、蚊…
敷居を越えてしまっただけで害虫になってしまうのは心苦しい。
私としては、できるだけやっつけずに逃がすようにしたいのだけれど、
お客さんから頼まれたときには、確実にしとめないといけない。
遠くからはるばるいらしていただいているのに、
安心してゆっくりと過ごしていただけないのも、また違う。

本当に、この夏はアブが多かった。
私は、何度靴下を脱いでお風呂に出動したことか。
でも、外にはたくさんいるのだから、結局キリがないのだ。
やっぱり殺生はいやだな。ジレンマジレンマ。

「あはれ蚊は殺してはいけない」とお客さんに教わったけれど
おにぎりを握っているとき、土鍋を洗っているとき、電話にでているとき、
彼らは手が塞がっているときを狙ってくるほどに小賢しくて、かゆい。
あぁ、ジレンマ。

実りかけの秋

2006年09月26日

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受付のところの「今日のお天気」は、新聞の予報なのに当たらない。
今日は曇りのち雨になっていたけど、空は降る素振りも見せない。

朝夕にくらべて、昼はまだまだ暑くて、昨日なんかおばあちゃんが
畑に来ている人にと、店の冷蔵庫から瓶のコーラを持ち出していた。
「こんな暑かったら、コーラくらいやないと効かん」という言葉に笑う。

それにしても、仕事をしながら自然のうつろいを感じられるのは幸せ。
イチジクも栗も柿もオリーブも実をつけているけどまだ青い。
もう赤いのは、落ちたざくろと彼岸花。
ああ本当に、季節は四つなんかではなくて、もっと滑らか。
さかいめがないから、数えることなどできないし、毎日新しい。

お風呂の柿が熟れたら、秋の食前酒にいただこうとこっそり狙う。

人形さがし

2006年09月25日

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「子どもの日」にはお部屋のどこかに、人形が隠れてる。
見つけてくれたらささやかな景品があるのだけれど。

この人形はスタッフの自主的な手作り。
今まで使ってたのが、擦り切れちゃったので作ってくれたもの。
一度見たら忘れられない、クセのあるあまりのかわいさに
惚れこんでしまって、お休みの日にいっしょに作ったりもした。
型紙も作り方もなく、ひたすらにフリーハンドなのだけれど、
小さすぎて細かい作業で、一度に二匹が限界の不器用な私。
かわいくしようとしても、なぜかニヒルな表情になってしまう。

味があるといってね、カエルのつもりなの。
子どもたちは意外とかわいがってくれるの。

台風一過

2006年09月19日

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あまりの日差しに、発光する雲。
自転車で出かけたお客さんが、日に焼けて戻るほど。

夏野菜が終わって、休ませていると思っていた土のところ、
いつの間にか、おばあちゃんはしっかり仕事をしていた。
冬野菜は苗ではなくて種だから、気が付かなかったな。
よく見ると土はきれいにうなってあって、ふかふか。
一列ごとに何を蒔いたか、並ぶ種の袋もかわいらしい。

大根、蕪、菊菜、壬生菜、白菜…楽しみだな。

そのかたわらでまだまだねばる、茄子と青唐。
掘られるのを待つばかりの一面のさつまいも畑。

台風の夜に

2006年09月17日

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風を嫌う船が湾に集まってできた、希少な夜景。

台風は思ったよりおとなしく、静か。
今夜のお客さんは少なく、静か。

めだかちゃん

2006年09月15日

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お客さんに連れられて、はるばる海を渡っていらしためだかの赤ちゃん。
とっても眺めのいい、二階のロビーで暮らすことになりましたよ。

特別な日々

2006年09月14日

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今日の私のお客さんは、ご姉妹とその旦那さん。
七回忌を迎えたお母さんの島遍路の足どりを辿る旅なのだそう。
全てを巡ることはできないけれど、今日はきれいに晴れてくれたので、
笠ヶ滝などの山岳霊場にも行けたと喜んでいらっしゃった。
私は、お母さんもここに来てくれているつもりでおもてなしする。
「星空ツアー」は碁石山のお参りもかねているから、是非にと誘う。
出かけるころには夕方まで出ていた薄い雲もすっかり晴れて、星が出た。
お母さんが喜んだから、晴れたのだ。

宿にはお客さんのつよい想いが入り込んでくる。
お迎えするたびに、館内の空気が濃くなっていくのがわかる。

同じ晴れの日に、カヤックを楽しんでいらしたお客さん。
四年越しの想いで、旅日記を手に、いらしたお客さん。

毎日の、ひとりひとりの、想いやものがたりはさまざま。
誰かにとっての特別な日が毎日つづく、宿というところ。

夏のおわり

2006年09月12日

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今日、夏のおわりをはっきりと感じた。
あんなに悩まされたアブや蚊が減ってきていることも、
畑のトマトが終わっても、気付かないふりをしてきたけど
もう、これまでのようです。

朝晩の涼しさは、続いた雨のせいだと思っていたけど
今日は昼間の風もすっかり秋だった。
そう思って見上げると、空はいつの間にか高くて、雲は薄い。
何もかも変化して、新しくなり続けているのだな。
おしながきの「晩夏」の文字を「初秋」に書きかえよう。

ご夕食後の「星空ツアー」に参加したお客さんが、
仲良くなって帰ってきた。今夜は雲が出ていて
星は望めなかったけど、そんなことはどうでもよくて、
星が見えなかった旅の夜を共有したのだろう。
そんな風に楽しめるお客さんたちでよかった。
それを見送って、迎え出る嬉しさよ。

 「星は見えなかったけど、夜景がよかった。
  いっしょに行ったメンバーが、またよかった。」

秋の夜長に遅くまで囲炉裏で盛り上がり、
「また明日」といって別れるお客さん。それを目撃した私。

うっかり

2006年09月10日

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あんなに目立つところに貼っておいてくれたのに、
なんでちゃんと見てなかったのか。

「朝刊をお届けします」とご案内してしまった…。

雨上がりに

2006年09月08日

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昨日とはうってかわって、青い空に白い雲。
虫たちが喜ぶのを見た。

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       今日出会った虫
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 ・ おばあちゃんのお花にアゲハチョウ
 ・ ミント畑の親子バッタ
 ・ 椿の葉っぱを食べていた毛虫
 ・ 摘んだ葉っぱについてきたアリ
 ・ 立派な巣をつくった小さいクモ
 ・ 飛行機みたいな音のカナブン
 ・ 水を飲むハチ
 ・ お風呂の窓にアブ
 ・ 石畳の隙間にヤスデ
 ・ スタッフルームの蚊
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すごいなぁ…昨日はどこにいたんだろう。
二日分の仕事を、みんな忙しそうにしていた。

恵みの雨

2006年09月07日

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ミントを摘みに表へ出て、おばあちゃんと会う。
耕運機に入ってもらって耕すところの草を抜いているところでした。
ふんわりと堆肥も混ぜ込んで、土を休ませてから冬野菜だ。

畑の端に座り込んで、蚊にいっぱい刺されながらも話し込む。
おばあちゃんの民宿のときのこと、宿の今のこと、畑のこと、
島のこと、お客さんのこと、喜びのことなんかを。
「人とのつながりはお金では買えん」と言ったのが本当にしみた。
今まさに、おばあちゃんと並んで座っていることさえ不思議なこと。
がんばろうねと言い合って、充ちた心地でそれぞれに戻る。

ミントはこの雨で、またいっせいに新芽を出していた。
こんなに毎日摘んでるのに、たくましいものだな。

おばあちゃんは話しながら、少し泣いた。
あの後の突然のどしゃ降り、大丈夫だったろうか。
私は見事に浴びせられちゃったけど、芽が出るかな。

おしまいの畑トマト

2006年09月05日

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昨日おばあちゃんの畑に行ってみたら、胡瓜もトマトもすっかり抜かれてた。
だからこれは今年最後の畑トマト。

形や大きさ、虫食いなんかで、厨房では使えないのを喜んでもらう。
私はこのトマトで、食前酒のカクテルを作るのです。
潰してしまうから器量は関係ないのです。

でもその前に、ほれぼれしちゃう。
トマトひとつとっても、こんなにいろいろな色や形や大きさがあるなんて、
私は知っていたけど知らなかった。
ミニトマトは朱色で、トマトは紅色で、熟れ具合で色もやわらかさも違って、
そのひとつひとつの実のなかにも無数の色のつぶつぶがあること。
種にもいろいろな色があることとか、トマトの枝がちょっと湿っていることとか
予想はしてたけど、思った以上だった。体感して知ることは新しいな。
それに…ひと夏でこんなに実るなんて驚いた。
おかげで私は、このひと月で一生分のトマトの皮をむいた。

畑をしているのは、あるじのお母さん。
私は、家から離れていても、そばにおばあちゃんがいてとっても嬉しい。

ゆうやけこやけ

2006年09月04日

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このところの夕焼けは本当にすてき。
空気の中にたくさんの色があって、息を呑むほどのすばらしさ。
いい瞬間はすぐに移り変わってしまうから、私は時々思いあまって
お客さんに「見て見て!」と伝えてしまうけど、反応はいろいろで、
「ふぅん」と興味無さげだったり、「うわぁ」と窓にかじりついてくれたり。
私はというと、人によって感じ方が違うのをとてもおもしろく思う。

けれどやっぱり、共感できるのって嬉しい。
その一瞬を共有できたことって力強い。
人と人とを近づけるのって、決して時間の長さなんかではなくて
どれだけ充ちているかというような、濃さみたいなものなのだな。
その価値を決めるのは、一人ひとりの感覚なのだな。
私は毎日見てるくせに、お客さんの非日常に便乗して
毎日初めての夕焼けに感動してしまう。

夏の間、18時に流れていた町内放送の「ゆうやけこやけ」が
9月に入って17時半になったのに慣れなくて、毎日焦る。
18時から、ご夕食の案内が始まるので。

はじめにはじめまして

2006年09月03日

菜見です。
島にきて一年、まだまだ感動は続きつづけている。
この島にいることは、私にとってすごく栄養があるみたい。
小さな奮闘の日々が、私をつよくしてくれるみたい。

宿って非日常。
その非日常を毎日繰り返すのだから、どうしたっててんやわんや。
その時々は必死だけれど、ふと我に返ったときに笑いがこみ上げる。
そんな気分を積みかさねて、ふっくらと厚みをもっていく日々を
ちょっとでも表せるように、綴ってゆけたらいいな。
ちゃっかり成長してゆけたら、もっといいな。